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日本の高齢者 産業廃棄物か天の恵みか?

定年退職後も働き続けたいという人は、あまり多くありません。特に日本では、ほとんどのサラリーマンは平均40年間、ひとつの雇用主の元で勤め上げることに人生を捧げるからです。

65歳になったら引退してゆっくりしてもいいだろうと感じる人は大勢います。しかしそれはお断りだという人もいるようです。

かつての同僚に自分の人材会社に参加しないかと声をかけられた時、幸山明雄さん(67)には渡りに船でした。
「定年になった時、趣味だとか旅だとかやりたいって一時は思うんですけども、1年とか1年半すると、元気なのにこれでいいのかなって、私も含めて思うんですよね。そんな時に声をかけられて入ってくる人が多いですね」

幸山さんが入った人材会社「高齢社」は、定年退職してなお働きたいという人たちの会社です。
人材登録している750人の平均年齢は69歳。最高齢は81歳だ。受付や個人運転手など、30種類の業務内容ができあがります。

高齢社の創設者・上田研二さんは日本の労働人口の縮小を解決するカギは、高齢者や女性、外国人、ロボットにあると講習会で聞きました。そこで「日本のシルバー人材を活用できる会社を始めたんです」と、現在の代表取締役の幸山明雄さんは話します。

日本の労働人口は急速に減り続けています。
高齢社が創業した2000年に、日本の総人口に占める65歳以上の割合は17.4%だった。2016年2月になるとその割合は26.9%にまで上がり、2040年までに36.1%になる見通です。

その3割はすでに医療や年金に費やされ、その割合は急速に膨らんでいます。
高齢社を立ち上げた上田さんは自身も70代。退職した高齢者は、リサイクルすべき「産業廃棄物」だ、家で妻の邪魔をするくらいならまた働いた方がいいと冗談にしていました。

「現役の時はみんな週5~6日フルタイムで働いていたけど、高齢者になると毎日働くのは大変だから、週3日をベースにして、同じ仕事を2人でワークシェアリングしてもらっています」と幸山さん。

高野力三さん(68)にとっての週2日の職場は、都心にある屋上庭園だ。東京タワーとレインボー・ブリッジが見える見晴らしの良い屋上で依頼主の庭の手入れをしている様子は、はた目には仕事というよりは楽しい趣味のようにも見えます。
「定年前は(東京ガスで)工場のフロアプランの仕事とかをしていて、造園技能士の資格も持っているんです。だから屋上にはどういう土がふさわしいかとか、そういうのを分かっているので、またこういう機会がもらえて嬉しいです」と高野さんは言います。

高野さんをはじめ高齢社が派遣する人たちの収入は、それほど高くはない。平均時給は800~1000円。飲食店の学生アルバイトと同じような金額です。

小遣いに、孫のためにと、時給の安さは必ずしも問題ではありません。
「週3日程度、週30時間、もしくは40万円を超えなければ、社会保険料を会社も本人も負荷しなくていいですし、年金にも影響が出ない。週3日なら基本的には30時間越えないので」と幸山さん。「自分の自由に使える良いお小遣いになるし、それで孫を甘やかせられる。それも働くことの魅力です」。

しかし日本は伝統的に儒教社会なので、通常ならば年長者ほど報酬が高く、職場でも尊敬されるのが普通です。なので、低い立場で職場復帰することに抵抗を覚える人も何人かいたそうです。

「引退した後に現役復帰したいなら、後輩として入るんだって、新入社員に戻らなくてはならないと、自分たちを教育し直すんです。相手をさん付けしなさいとか。下手にでるというか。年寄りになると頑固ですが、従順な気持ちになって、お手伝いの気持ちで仕事に入ってもらわないとなりません。そうすると、歴史のある人間に見習うことはたくさんあると思うので、黙ってても相手がこちらの背中を見て学んでくれるようになります。そういう気概は大事だと思います」と幸山さんは言います。

しかし年功序列は日本社会に根深く組み込まれています。

そのため75歳の常野正紀さんが柏市に地域支援グループ「地縁のたまご」を作った時には、絶対に以前の職業や肩書きをグループの中で話題にしてはならないと決めました。「地縁のたまご」には現在100人以上が参加し、自分たちを「他世代交流型コミュニティ」と呼びます。

退職前は何をしていたのか、オフレコでもいいからと尋ねても、常野さんは教えてくれませんでした。たとえ誰かがかつては社長や外交官だったとしても、グループの全員が互いに平等に接するのが大事だからだと言います。
常野さんたちが柏市で請け負う作業は、決して派手なものではありません。

現役時代の肩書がなんだったにせよ、どれだけ高い役職に就いていたかいなかったかは関係なく、常野さんは明らかに今の自分の役割を誇りに思っています。

地域に貢献できているという充実感も印象的です。それは、スリッパ履きのまま家でじっと座っていただけでは、得られなかったものばかりだからです。
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